『NOPE』雑観~空飛ぶ円盤と映画史の円環~

ジョーダン・ピール監督の最新作『NOPE』が映画史を多分に参照していることは、この物語の早い段階で明示される。 主人公のOJは、ハリウッドの映画撮影に使われる馬を育て、調教する牧場を父から受け継ぐ。このヘイウッド・ハリウッド牧場は、世界で最初の映…

ボーイズクラブは走り続けるか

最近、花沢健吾の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を読んだ。 がむしゃらな田西の姿がウィル・スミスのビンタにダブってしまうのはタイミングのせいかもしれない。求められてもいないのに、女のためにと拳を振るう男たち。 特に、同作の前半におけるヒロイン・…

日記⑬

1/10 「芸能人はカードが命」26に行きました。 今回は会場が浜松町で池袋よりも近いはずが、結局寝坊して12時半に起き、着いたのは14時過ぎで、欲しかったものは半分近く完売しちゃった。 以下買ったもの。 可愛い。相変わらずイラスト本以外は買っていませ…

就活の総括

「長い19世紀」という言葉がある。1789年にはじまるフランス革命による近代国民国家の時代の幕開けから、1914年の第一次世界大戦の勃発によって植民地獲得競争を基調とした帝国主義の時代が終わりを迎えるまでを射程に捉えた時代区分であり、イギリスの歴史…

動物を可愛く撮るべきか、撮らざるべきか、それが問題な『GUNDA』(の感想)

スクリーンに─光学的な意味で─投影される映像というのは現に存在しているわけであるが、そこに映し出される意味はと言えば、投影された観客の欲望にも他ならない。 youtu.be 『GUNDA』はドキュメンタリー映画だ。BGMやナレーションを排し、画面はモノクロ。…

日記⑫

11/25 結局は歴史性に対する態度なんだなという話。 なぜか日本の論壇の一部では90年代アメリカの文化戦争の焼き直しのようなアイデンティティポリティクス批判が流行っているようでバカばっかだ全く(Awich)と言う他ない。そもそも、ロビー活動や利益団体の…

庵野秀明展感想(『ラブ&ポップ』の切断、『シンエヴァ』の接続)

11/10 庵野秀明展に行った。印象に残ったところだけ。 ひとつめは『ラブ&ポップ』。『シン・ゴジラ』以外の実写監督作の扱いは大きくないため、『ラブ&ポップ』も基本的に上の写真2枚に収まる程度だと思っていただければ。 ちなみに、アニメでも一部携わりま…

日記⑪

11/1 『DUNE』見た。悪くはないけどぼんやりしてんな~、くらいの感想。Part1でぶつ切りするストーリーに2時間半もかけるなら、もう少しメリハリつけてほしいよね。”砂の惑星”といっても、例えば『アラビアのロレンス』ほどのスペクタクルを感じられるか?と…

日記⑩

10/23 芸カ行った。 はじめて買ったサークルの。 いつも買ってるサークルの。有栖川おとめIDステッカーを毎回買ってる。今日も買ったらサークル主さんに「え、大丈夫ですか?」って言われた(頭がってコト?)。↓中身参考までに。正直最悪ここだけ買えたらいい…

そこは中世ではなく、そこに真実は存在しない(『最後の決闘裁判』感想追記)

Ⅰ.そこは中世ではない その評(肯定的にしろ否定的にしろ)の中で、この物語が「中世」を舞台にしている点に何らかの意味を見出す意見を目にし、耳にする。要約するならば、「アップデートされた視点から野蛮な旧習を描けている」的なそれや、「いま・ここの問…

感情のアリーナにて──決闘をする/しないということ(『最後の決闘裁判』感想)

決闘裁判は、紛れもない感情のアリーナである。それぞれの人間が、それぞれの感情を演じる場である。 決闘裁判というアリーナへ、ある3人の人物がどのような感情を携えてきたのかを語ることにこの映画の主題はある。登場するキャラクターの感情を物語らない…

日記⑨

9/20 中華街で飯食って喫茶店で本読んだ。 9/21 親ガチャという単語、中高生が使うならともかく、いい大人まで乗っかって「いや、これは一考に値する…」みたいな神妙な顔し始めたのが正直厳しい。 究極的には親の間の差異を排することは不可能なのに(私有財…

いつ誰がシラフをシラフと決めたのか(『アナザーラウンド』感想)

「人間の血中アルコール濃度は常に0.05%を保つことが理想である」と、ある哲学者は言う。おそらく普通に生きている人間であればこれを真に受けることはないのだろうが、普通に生きることからドロップアウトしてしまった男たちの一人こそ、この物語の主人公で…

翻弄される朝鮮半島のイメージとしての(『白頭山大噴火』感想)

ここ数年のハリウッドで、これといったディザスタームービー(とくに自然災害を取り扱ったそれ)が思いつかない。僕が子供のころに都市伝説大好きキッズだったからそう見えていたとか、あるいは日本社会がノストラダムスの余韻とマヤのダメ押しの狭間で妙な熱…

ロンリーウルフと呼ぶにはあまりにも……な松坂桃李(『孤狼の血 LEVEL2』感想)

果たして、この映画における”孤狼”とは誰のことだっただろう。 少なくとも、前作『孤狼の血』におけるそれは、ダジャレめいた名前が指し示す通りに、大上その人であったことは間違いない。すると"血"というからには、日岡がその役回りを受け継いだかのように…

日記⑧

仕切り直し 9/10 京急油壺マリンパークに行った。 油壺はだいたいマグロで有名な三崎の辺りで、言わば神奈川県における南の端っこ。 個人的には数少ない家族旅行で行った土地の一つ。そんなに思い入れがあるわけではない、どころかほとんど記憶にはないんだ…

日記⑦

8/16 ゲームセンターでアップルジャックのBIGぬいぐるみをGETした。 ↓大きさ比較。かなりBIG。かわいい。 https://twitter.com/mylittleponyjpn/status/1423878792397791234?s=20 クレーンゲームをまともにやった経験がない、少なくとも物心がついてから真剣…

日記⑥

再開 8/9 引っ越しをするにあたり意識を高めるためNetflixで『KONMARI~人生がときめく片づけの魔法』を見始めたんだけど、思いのほか発見がある。 まず、Twitterなどで揶揄されているようなこんまり像がほとんどでたらめというか、”断捨離”や”夫のプラモデ…

『竜とそばかすの姫』、好きくないじゃないじゃないじゃないじゃないじゃないじゃない

細田守のアニメに共通している居心地の悪さのひとつの要因は、キャラクターに対するピントの合わせかたにあると思う。居心地が悪いといったって、それはお前の感想だろうと言われたらその通りなのだが、しかし、キャラクターの描き分けにおいて、これほど解…

日記⑤

7/19 ルックバックの話がしたいけどルックバックの話はしたくない。 個人的なことを言えば、落書き小僧だった頃の記憶が奔流のように溢れだしてとてもつらくなった。小学生のころは、今からは考えられないほど、漫画を描くことに取り憑かれていた。では、な…

日記④

7/12 BLM運動における銅像に対する異議申し立てへの考察。の追記。 ある種の人間は、リー将軍だったり並み居る大統領だったりの銅像が攻撃されることに怒り、そして攻撃するものを嘲笑する。しかし、異議申し立てのあることそれ自体が、特定の人物の銅像が必…

日記③

7/5 思弁的な人間は構造を置き去りにする一例。 東浩紀が、政治的に正しいリベラルエリートが儲けて権威的な指導者を求める大衆は搾取されてる、という趣旨のネット論客に影響を受けたアニメアイコンの大学2年生みたいなことを言っていた。しかし、例えばア…

日記②

6/29 思弁的になりすぎるとよくないという当たり前のこと。だいたいにして、その思弁を突き動かすのは煮詰まった自意識だったりする。それ自体は結構なのだが、自意識から出発した思弁の末に出力されるものは、やっぱり自意識に返ってくるところが難点。 例…

見たぞ!2021年上半期の動物映画まとめ

①新感染半島 ファイナル・ステージ ②KCIA 南山の部長たち ③スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち ④花束みたいな恋をした 猫映画。二人が社会人として型にはまった生活をはじめる前に飼うのが猫というのが如何にも。 ⑤シン・エヴァンゲリオン…

日記①

6/25 オッサンになるというと、文字通りだんだんと「成る」ものだと思っていたんだけど、むしろその進歩のなさ故に精神の輪郭がオッサンへと定まっていくんだというのが実感として分かってきた。 つまり、自分が変化してオッサンになっていくのではなく、社…

まじめに不真面目というよりも、不真面目にまじめな『ビーチ・バム』

『ビーチ・バム まじめに不真面目』の悲劇は、あまりにもぴったりな副題を与えられてしまったことだろう。「まじめに不真面目」。本作の日本公開に合わせて著名人から寄せられたコメントたち*1は、それを雄弁に物語っている。 コメント① コメント② コメント③…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を見て、なぜこんなにも動揺させられるのか。感動だとか好きだとか、あるいは庵野に対する関心だとか、そういった感情とは異なる、動揺。 そもそも、『シンエヴァ』は僕の好きなある種の物語の類型に、とてもよく似ている。…

『花束みたいな恋をした』ことはないけれど。

『花束みたいな恋をした』ことはないけれど、”クソみたいな労働をした”ことはある存在としての我々。しかし、驚くなかれ。『花束みたいな恋をした』は、予告編やタイトルから(恐らく多くの人が)想像するイメージに反し、そうした我々にとってこそ、目を逸ら…

Fuck Swag-i ___寸借詐欺には気を付けよう。

タイトルの通り。それ以上でも以下でもない話。 よく、「自分は詐欺に引っかからないと高を括っている人ほど詐欺に引っかかりやすい」という話を聞く。その意味で言えば、僕は特段「自分は絶対に引っかからないね」と自信を持っていたわけではないように思う…

おかしなガムボール~ママさん回まとめ_シーズン1~

「おかしなガムボール」のニコル・ワタソンこと、ママさんのキャラクターが多少なりとも掘り下げられる、ママさん好き的に見どころのある回を備忘録としてまとめておきます。 #2「家族改造プログラム」 序盤はあまりママさんに焦点があたる話はない。この…