2019年の映画総括
下のランク付けはなんとなくの雑感。気分によっても変わります。とにかく色々と忙しくて、今年はあまり映画を見られませんでした。まあ忙しかったタスクも消化できていないんですが。
S 海獣の子供 ブラック・クランズマン、アベンジャーズ/エンドゲーム
魂のゆくえ
A スパイダーバース、バイス、アメリカン・アニマルズ、ファーストマン
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド、ジョーカー
マリッジ・ストーリー
A- バスターのバラード、グラス・イズ・グリーナー、トイ・ストーリー4
B アクアマン、ちいさな独裁者、女王陛下のお気に入り、麻薬王、運び屋
ビハインド・ザ・カーブ、キャプテン・マーベル、シャザム、名探偵ピカチュウ
ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ、僕はイエス様が嫌い、主戦場、プロメア
ハッピー・デス・デイ、アス、アド・アストラ、エイス・グレード
C ベルベット・バズソー、ミスター・ガラス、サスペリア、ギルティ、FYRE
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム、イエスタデイ、IT:チャプター2
ザ・ランドロマット─パナマ文書流出─、ゾンビランド:ダブルタップ
D 幼女戦記、グリーンブック、スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け
E 天気の子
今年の10本を挙げるなら。
①アベンジャーズ/エンドゲーム
とにかくよかった。説明不要。
②ブラック・クランズマン
コメディでありホラーでありドキュメンタリーだ、という1本。主人公は公民権運動の組織に潜入するために警察に雇われる、つまりテロを企む黒人たち向けのスパイになるところから話が始まる(ストークリー・カーマイケルの演説を聞いて感銘を受けるシーンが最高にいい。)しかし、本当にテロを企んで、爆弾でぶっとばして、銃を乱射しているのは白人たちじゃないかという筋立て。ラストのシャーロッツビルのフッテージは現代にもそれが続いている様をまざまざと写し取っている。『ドゥ・ザ・ライト・シング』で描かれる暑い暑いブルックリンのように、怒りに燃え上がるメッセージを内包した本作であるが、しっかりとエンターテインメントとして面白いのも素晴らしい。潜入捜査モノのサスペンスやバディ感、合間合間のお茶目なギャグ。ギャグがギャグにならない恐ろしさ。その微妙なバランスを成り立たせているアダム・ドライバー。KKKのヤツらの哀愁とどうしようもなさ。どこを切り取っても今年最高の映画。あとRTして応募系のアレではじめて当たったのでうれしかった。
③海獣の子供 と 魂のゆくえ と ファーストマン
前のブログで書いた通り。今年を総括すると、とにかく『2001年宇宙の旅』に引っ張られていた1年だった。去年、映画館のIMAX上映で『2001年宇宙の旅』を見てから猛烈に食らってしまい、その面影のある映画が自分の中で強い印象を残した、という3本。
ここには書いてないけれど、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』もそのひとつ。『王立宇宙軍』というと、オタクが狂ったように「ロケットの発射シーンの細かい作画が~」としか言わないアニメとして、「それしか言うことねーのかよ」と、若干敬遠していたものの、ようやく今年の夏に18きっぷの旅のお供に見たところ、完全に『2001年宇宙の旅』をやろうとしている映画でハマってしまった。特に気に入ったのはロケットを発射する場所が貝塚だっていうところ。『2001年』では、猿が動物の死骸の骨、つまり武器を放り投げると、カットが変わり宇宙船(原案では核ミサイル)が映るわけで、骨から宇宙船への連続性を戦争=死のイメージとして描いている。しかし『王立宇宙軍』における宇宙軍ひいてはロケット、これが戦争に関しては全くの役立たず。単なるロマンであり、人類文明の希望的な象徴であり、主人公にとっては生きる目的であり。そのロケットが貝塚という人間の食事のゴミの集積場から発射されるのが重要で、貝から宇宙船への連続性を生きることそのもののイメージとして描き出している。事程左様に、どう生きるかが重要という話。
④スパイダー・バース
アニメーションとして最高。とにかくこれに尽きる。あとは『キャプテン・マーベル』との抱き合わせ。
⑤アメリカン・アニマルズ
きっと何者にもなれないお前たちに告げる。そんな1本。90年代に囚われたゼロ年代の男たちのドラマがテン年代最後の年に公開される。そういう時代を、俺たちを象徴する映画。
⑥ワンス・アポン・ア・タイム…イン・ハリウッド
この「…」の位置が重要らしい。ブラピがカッコいいんすよ、ほんと。今年で言ったら『アド・アストラ』なんかもブラピ映画だったけど、こっちはむしろヒロイックな側面を削いで、それがテーマと直結しているタイプの映画。とはいえ、やっぱりカッコいいブラピが見たい。『マインド・ハンター』を見て思ったけど、チャールズ・マンソンをあえて描きすぎないあたりが上手い。空虚な中心的な。要は、ハリウッドに追い出され、ハリウッドに殺された、中心に近づけなかった人間の話なんだよってこと。個人的にはアメリカンニューシネマが好きなので、「デニス・ホッパー野郎がよ」みたいな感じにちょっぴり傷つきつつ、あとはブルース・リーの描き方とかね。あとタランティーノが脚の好きなことはビンビンに伝わってきて、この感じ久しぶりだな~となった。
⑦ジョーカー
映画体験の妙を感じた。というのも隣に座っていたOL2人組。コイツらがダメだった。ひそひそ話してうるさいし、スマホは使いやがるし。何より、アーサーがヘマをするシーンで笑いだす始末。人生どうにもうまくいかないアーサーを思えばフラストレーションの溜まるシーンのはずが、まるでギャグシーンみたいに笑うもんだから、こっちとしても腹が立って「テメーら綺麗に着飾ったOLの見せもんとちゃうぞアホが!!」「なあお前ら今俺のことバカにしたのか??!」と叫びだしたくなってしまう。終わった後も彼女連れの大学生みたいな連中が「いやーエグいわー笑」なんて感想を垂れたり、サブカルでございといったオッサンなんやらも「あそこ〇〇のオマージュだよね」とインスタントな確認作業に勤しんでいて、もう全部しょーもな、という1本。多分今見たら違う感想が出てきそうな気もするけど、あの瞬間のあの感情は確かに忘れ難かった。
⑧トイ・ストーリー4
事実上のクリント・イーストウッド『グラン・トリノ』。具体的に言うとギャビーギャビーまわりのストーリー。正直、そこ以外は評価が分かれているように、自分としてもどう評価したものかという感じがあるのだが。
ギャビーギャビーはどういう人形か。1950年代に作られた人形だ。そしてGood old daysといった町並みに位置するアンティークショップで売られている人形だ。この如何にもWASP然とした顔立ちの人形ギャビーギャビーは、まさしく古き良きアメリカの象徴であるわけだが、彼女には持ち主がいない。ボイスボックスが壊れて、声の出ない彼女は完璧ではないからだ。では彼女の完璧な持ち主とは誰か。それは店の主人の孫娘ハーモニーだ。なぜ彼女が完璧なのか。このハーモニーは、オモチャ「ギャビーギャビー」の説明書に描かれている人形で遊ぶ女の子のイラストにそっくりだからだ。青い目とブラウンの髪。50年代のおもちゃメーカーは白人の女の子をターゲットにしていればよかったのだから、説明書のイラストもむべなるかなといった具合である。説明書の中にしか存在しない「完璧」を求めるギャビーギャビーは、ついに声を手に入れて「完璧」になり、ハーモニーのもとに向かう。しかし、ボイスボックスが直ったとて古臭い人形にすぎないギャビーギャビーは、ハーモニーに見向きもされないのである。「完璧」が完璧ではないことを知ったギャビーギャビーは結局アフロアメリカンの少女の手に収まる。彼女は自分を必要としてくれるからである。埃を被ったアンティークショップから解放されたアメリカの魂は、こうして受け継がれていくのである。
⑨ビハインド・ザ・カーブ
とドキュメンタリー映画の数々。色々いいドキュメンタリーはあったのだけれど、一番スリリングで面白くて、そして普遍的な切り口があったのはこの映画。結局、独特の世界観で回っているコミュニティの危うさと、SNS時代にはそれがいとも容易く形成されてしまうという結論は、『主戦場』の保守界隈(そしてなによりそこが政権と地続きであるのがこの国の異常なところだろうが)にも通ずるところがある。Twitterのあの界隈やこの界隈、あなたの身の回りにも『ビハインド・ザ・カーブ』が…。
⑩バイス か ちいさな独裁者 か マリッジ・ストーリー
多くのヒーロー映画、特になにより『ジョーカー』が、仮面というか、役割を持つことで救われる物語なら、これらは役割に自分を飲み込まれて、そして己も周りもめちゃくちゃにしてしまった人たちの物語、という感じ。いや、もっと色んなことは思ったんだけど、どれにするか決めあぐねて最後に無理やりまとめました。以上。
数字は順位ではありません。10本じゃないのも触れないでください。
●天気の子 と スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け
許せない。